本稿ではまず、私の親父の事から語りたいと思う。親父は団塊の世代で年齢も80をとうに越してしまった。しかしながら、ありがたい事にとても元気である。その元気の源は前向きに心身を動かす事の様である。そんな私の親父を象徴するものは、「仕事」「酒」「読書」「登山」であった。さすがに現役時代を終えてしばらくすると登山から身を引き、その代わりに俳句の会に所属している。そして親父にはもう一つこの年齢にしてめずらしい趣味とも言える特技がある。それは、インターネットである。
親父がインターネットに出会った時期は思い起こせば、退職の直前だったと思う。世の中にインターネットの普及という大波がやってきて、それに何とか乗れた時期であったと記憶している。親父だけでなく、大学時代の山岳部の仲間や、会社の同僚たちも個々にパーソナルコンピューターを入手し、電子メールで連絡をし始めたのは、この頃であろう。
現役を退いた親父は、書斎で好きな読書をする事に加え、私のお古のデスクトップPCで新たなツールである電子メールを駆使し、仲間と連絡を取り、退職後も登山や飲み会に出かけていった。ありていに言って機械音痴の親父がPCを使いこなしている事を、私は密かな自慢に思っていた。
そんな親父も歳をとった。姉の話では、2階の書斎に上がるにも一苦労している様で、読書する姿もめっきりと減ってしまったようである。そして、仲間たちである。人生に幕を閉じる仲間も、ひとり、ふたりと増えるにつれて、メールのやり取りも減ってきたようである。私は、書斎で本を読んだり、PCでニュースを読んだりする親父の姿が過去のものになってしまった事を悲しく感じた。
この様な大きな変化が顕著になり、ようやく私は重い腰を上げた。それは、ノートPCを親父に買い与える事である。ノート型なら、1階のスペースを取らないだろうと思ったからである。そして、なぜ腰が重かったかというと、私が持っていたノートPCのイメージは、画面が小さい上、何せ価格が高いというものだった。実際に私が過去に購入したノートPCはとても高価な物であった事に加え、寿命がデスクトップPCに比べ、短かった。そこで、今回はまず中古市場から情報を集める事にした。
その際、私が想起したのは、私が初めてノートPCを購入した、かなり昔の事である。当時、相談した先輩の口からdynabookの事も聞いた記憶がある。確か、「頑丈らしい」、「大学の先生がよく使っているらしい」、「価格が高い」という3点は覚えている。結局のところ、私は別のメーカーを選び、その流れで歴代のノートPCも最初に選んだメーカーを購入してきた。
しかしながら、今回は自分が使うのではなく、デスクトップを使い続けてきた高齢の別人が使うのである。せっかく購入しても、有効に使ってくれるかは、やってみないと分からない。私は、過去に聞いた「頑丈らしい」という記憶をもとに、dynabookを選ぶ事にした。
中古市場を検索し、躊躇することなく、購入する決心がついた。なぜなら、中古市場にあるノートPCの値段が思いの外安かったからである。これなら、気軽に試しに使ってもらえる、そして、値段からして2年も持てば十分だ。そう思った。
結局のところ、私が購入したdynabookはおそらく8年落ちで本体が約26,000円、それに古いMicrosoft Officeと念のための増設メモリーを加え、合計で31,000円弱だった。中古品とはいえ、本当に安くなったものだと思った。即購入した。
本人には何の前触れもなく買い与えたdynabookは現在、次のように扱われている。
夕方過ぎから何時間もお酒を片手にYouTubeを視聴している様である。それは以前よく聴いていた山本周五郎などの朗読に加え、かなり幅広いジャンルの動画を視聴しているらしい。そして、それは毎晩22時頃まで続くらしい。また、テレビを見ながらの視聴も珍しくない様である。加えて、姉がWordで作成した句会の原本を使い回し、毎週、俳句を5つ作成しているそうである。
当初の見立てである2年で買い替えの予想を超え、今年で使い始めて4年目に入る。加えて、古いノートPCは何かと問題が発生するものだが、現在も安定して稼働しているようである。
人はだれでも年齢を重ね、時には抗えない環境の変化にも直面する。しかしながら、私の親父は、以前の様にたくましく、新たに手にしたdynabookと共に日々の老後の生活を謳歌しているようである。

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